東洋医学の基礎
~五行の使い方~
⚠︎記事中で扱っている説・理論は、現代までに日本に伝えられ、現在でも学ばれている、基礎的な東洋医学的治療に基づいています。
1. 五行説とは
はじめに、「五行説」とはどのようなものか、簡単に説明します。
五行説とは東洋医学における自然哲学思想の一種で、万物は5つの元素に分類されるという説です。ありとあらゆるものを陰と陽の2属性に分ける引用説と類似していることから一般的に「陰陽五行説」と一括りに呼ばれることもあります。
五行の元素は木(もく)・火(か)・土(ど)・金(ごん)・水(すい)の5種類で、それぞれの元素が互いに関係し合ってバランスを保っています。これはつまり、心身の健康にも五行のバランスが重要であり、すなわち五行バランスの崩れは疾病(病気)に繋がってしまうということです。
2. 相生相克関係
このように健康維持に重要な五行バランスですが、それを整えるためにはまず相生(そうしょう)と相克(そうこく)という、五行間の相互関係について知っている必要があります。
まず、「相生」とは、その名の通り「生み合う関係」のことで、それぞれの五行が、次に並ぶ元素を生み出しているというものです。木は擦れ合って火を起こし、火は燃え尽きて土となり、土の中からは金が生まれ、金のある近くには水が湧き、水は木を育てるとされ、生むものを「母」、生まれるものを「子」と呼びます。
2つ目の関係である「相克」は相生とは対照的に「抑え合う関係」で、それぞれの五行が、2つ先の元素を抑制しているものです。木は土から養分を得、火は金を溶かし、土は水を堰き止め、金は木を切り倒し、水は火を消します。
このように、相生・相克はともに五行のバランスを整えるための相互関係です。相生関係では母が力を尽くして子を強め、相克関係では克する五行が少量の力を使って克される五行の力を押えます。互いに抑え、抑えられることで各五行の力関係は均等に保たれているんです。
3. 五行色体を用いた治療論
五行とその相互関係を知ったら、いよいよ治療論に進みます。五行の治療では、以下の「五行色体表(ごぎょうしきたいひょう)」を参照して、病んでいる五行の関係を考えながら病態を把握します。
五行色体表とは五行の各元素に、治療に関わる様々な要素を当てはめた表です。色体には5種類の内臓(五臓)や感情(五志)、動作(五労)など数多くの分類があり、それぞれに木・火・土・金・水に当てはめられた要素が含まれています。本記事では簡易的な色体表を用意していますので、以下のフレームをご覧いただくか、こちらからダウンロードしてご利用ください。
五行の治療では、はじめに症状に対応する色体を確認しなければなりません。例えば「肌色が黒く息が生臭くなっている」ような症状は、色体表では五色の「黒」と五香の「腐」に当てはまります。これらはどちらも五行の「水」に当たり、内臓では「腎臓」が病んでいることになります。加えて、他の色体で「水」に当たる「立」や「鹹」を踏まえ、この症状では長時間の立位や塩辛いものの食べ過ぎにより悪化してしまうことが読み取れます。
病態を把握したら、次は相生相克関係を用いて治療方法を考えます。上記の例では水に属する腎臓が病んでしまっているので、相互関係を用いて水を強めなければなりません。この場合、取れる手段は母である金を助けるか、抑えられている土を弱めるかの2択です。どちらの方法を選ぶかは他の五行の状態により、金に属する要素が弱めな場合には前者、土の要素に元気がある場合には後者を選択することになります。
五行の治療では主に鍼灸や漢方薬を用いますが、治療対象さえわかれば、素人でも簡単な予防・治療が可能です。例の症状において治療法が「金を助ける」ことであれば、日ごろから「金」に属する味や動作を取りすぎないよう、また幹や感情を使いすぎないように気を配れば徐々にバランスが整えられていきます。薬物治療に頼る前に、自主的にこのような治療を試してみれば、身体に負荷をかけずに健康になれるのではないでしょうか。
4. まとめ
今回は珍しく真面目な、東洋医学に関する記事でした。五行の色体表は現代医学的にも的を射ている内容が多く、日ごろの予防にも使えるのでお勧めですよ。